「多分、美味いと思うんだけれど」
「多分…………なのかい?」
「いや、こんなときじゃないと買わないから」
綺麗な包装に飾ったクッキーはショウウィンドウから選んだもので。
それに、ホワイトデーって名目でなければ……その売り場に向かうのも、少し壁があったりもして。
「フフッ…………確かに、そうかもしれないね」
そして、珈琲を淹れてくれている後ろ姿は……覚えある色合い。
少し、普段自分で選んでいるのとは違うもの。
「気に入って、貰えた?」
「兄くんが…………選んでくれたものだからね」
先週は、大切な誕生日があって……。
選ぶ悩みというのは……でもそれはとても贅沢で悩みという文字には正直当たらない。
「そっか……うん」
「ただ…………」
「ただ……?」
「少し…………邪な楽しみ方もされた気もするね」
「……否定しない」
ほんの僅か、不服そうな声に笑いながら謝る。
それは、特権というヤツだから……そして、多分これも。
「それと、千影」
「…………?」
後ろ姿に、そっと近付く。
「これも、追加で」
「…………!」
「この前出かけた時に、気になってたみたいだから」
ストールを、腕もおまけして。
「暢気な兄くんのことだから…………気付いていないと思っていたのに」
「それは、酷いな」
「そうか…………だから、今日のお返しはまず普通のお菓子だったんだね」
「折角なので、驚いてもらいたくて……もしくは焦らしたくて」
表情が見えないまま……でも耳がほんの少しだけ、赤く見えて。
安堵するような満足感を覚える。
「うん…………確かに、私も何処かで期待していたのかもしれないね」
「本当に?」
「さっきまで少しだけ…………兄くんに腹が立ちそうだった」
「そっか、ゴメン」
「フフッ…………じゃあ、そうだね」
腕の中の身動ぎ……回していた手に、吐息がかかる。
「私の欲しいものを…………もうひとつ、貰おうかな」
「指、少し痛いんだけれど?」
「お返しだから…………当然だよ?」
-- c l o s e